2020.11.23ブログ

今話題の竈神社と若一王子神社の鬼面をご紹介!

『鬼滅の刃』が漫画・アニメともに一大ブームとなっていますね。地元のニュースでも取り上げられ、お問い合わせをいただくこともありましたので、今回は信濃大町にある竈神社をご紹介します。

その前に、まずは話題なっている『鬼滅の刃』について。
『鬼滅の刃』とは吾峠呼世晴氏による漫画で、大正時代の日本を舞台に鬼に家族を殺された少年・竈門炭治郎(かまどたんじろう)と鬼にされてしまった妹・禰豆子(ねずこ)の兄妹が、家族を殺した鬼を倒すため旅に出る冒険物語です。現在、漫画・アニメ・映画と絶大な人気を誇り、主人公の苗字である『竈門(かまど)』と名の付く神社が聖地化され、ファンの方が多く訪れるなど社会現象となっています。さらに、文字は違いますが読み方が同じということで日本全国の『竈』神社にも注目が集まっているのだとか。
長野県でも『鬼滅の刃』ブームの影響は大きく、近隣の白馬村には『ねずこの森』という遊歩道があったり、鬼無里村には鬼女伝説があったりと、地元ニュース番組で『鬼滅の刃』に関連付けたスポットが紹介される中で、信濃大町の竈神社も取り上げられました。

 

【竈神社(かまどじんじゃ)】

・所在地 長野県大町市大町4718

・ご祭神 軻遇突智命(かぐつちのみこと)、奥津彦(おくつひこ)神、奥津姫(おくつひめ)神

竈神社はもともと、この地域を支配していた豪族である仁科氏が当時の居館(大町市社館の内)の裏鬼門の方角に守護神として創祀しました。鎌倉時代に入り、仁科氏は居館を現在の天正寺の地(大町市大町)に移しますが、その際に新しい居館の鬼門にあたる北東の地に鬼門除けの神社として竈神社を分祀したと言われています。そのため、地図上で『大町市 竈神社』と検索すると2つスポットが出てきます。今回ご紹介するのは、仁科氏が鎌倉時代に居館を移した際に分祀したとされる大町地区の竈神社です。

当初は三宝荒神社(さんぼうこうじんじゃ)と呼ばれ、地域の人々にも荒神様として親しまれていました。三宝荒神は不浄を嫌い火を防ぐという信仰から、邪悪の神が出入りする鬼門の方角に祭られる鬼門除けの神様です。また、その性質から囲炉裏や竈など火の神として祭られることも多く、特に日本においては台所やかまどを清浄な場所とする風習が強いことから『かまど神』として庶民の間でも広まっていて、現在でも民家の台所に祭られることがあります。そうした背景もあってか『かまど神』を祭った神社は日本全国にあり、『竈神社』という名称も決して珍しいものではありません。明治に入り新政府により神仏分離令が発せられると、信濃大町の『三宝荒神社』は神道色の強い『竈神社』に名称が改められ、現在に至ります。

境内の手水は北アルプスを水源とする男清水で水巡りのスポットでもあります。

大町市街地の中心に鎮座する竈神社は、敷地内に入ると国道横にあるとは思えないほど静けさに満ちていて訪れる人に安らぎを与えてくれます。敷地内奥には市街地にも関わらず杉の森が広がっていて、鳥のさえずりが心地良く響きます。ひっそりと佇んでいますが地域の人々に愛されるかけがえのない場所です。

現在、『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』が公開中ですが、偶然にも竈神社の裏にある西公園には蒸気機関車(C56-94)が展示されています。竈神社へお立ち寄りの際はぜひご覧ください。

毎年9月には竈神社例大祭が催され奉納花火が打ち上げられます。街中で打ち上げる花火は日本全国でも珍しいそうで、観光のお客様はもちろん地元の人々や子どもたちにとっても楽しみな夏のイベントのひとつです。(2020年は奉納花火の打ち上げは中止となりました。)

神職の方が常駐しているわけではないため、竈神社の御朱印を希望される方は参拝後に若一王子神社の社務所へお立ち寄りください。

 

 

ちなみに…『鬼』関連でもう一か所ご紹介します。

 

【若一王子神社】

・所在地 大町市大町2097

・ご祭神 伊弉冉尊(いざなみのみこと)、仁品王、妹耶姫(いもやひめ)、若一王子(にゃくいちおうじ)

鎌倉時代に仁科盛遠が大町守護のため熊野那智神社の第5殿に祭る若一王子宮を勧進しました。敷地内には重要文化財に指定されているご本殿の他、県宝の三重塔、市指定文化財の観音堂などがあり神仏習合が色濃く残る神社としても有名です。こちらも地域の人々に愛されている場所で、毎年7月に催される若一王子祭りは子ども流鏑馬や舞台(山車)の曳き揃え、稚児行列で賑わう信濃大町夏の一大イベントのひとつです。(2020年は子ども流鏑馬、舞台曳き揃え、稚児行列は中止となりました。)

こちらも手水は北アルプスを水源とする男清水で水巡りのスポットです。

そんな若一王子神社では今年、新型コロナウイルスなど疫病退散を願う『鬼』面絵馬が登場しました。

若一王子神社御本殿の箱棟の両端には、御本殿の火除け災除けの願いが込められた鬼面が備えられています。力強く眼を見開き真直ぐ外を見張る一対の鬼面は、南側は口を開けた阿形、北側は口を結んだ吽形となっています。
室町時代後期より460年余、御本殿守り続けたこの鬼面にあやかりたいとこの度、鬼面災厄疫病退散守護絵馬を製作いたしました願掛け絵馬として願事をご記入ご奉納していただく事はもちろん、玄関等に外向きに飾っておまつり頂ければ家庭の守りになろうかと思います。鬼面絵馬一体800円で頒ちしております。(若一王子神社HPより)

ご本殿の鬼面は敷地内の散策路から阿形、吽形ともに見学することができます。『鬼滅の刃』の物語の中で鬼は主に悪者として描かれていますが、鬼面には邪気を払う力もあり、若一王子神社の鬼面は長い間この地域を疫病から守ってきてくれたのですね。

口を開け舌を出している阿形の南側の鬼面。

口を結んでいる北側の鬼面。

絵馬には舌を出し、歯や牙をむき出し威嚇しているような表情の南側の鬼面が描かれています。参拝をしながらぜひ探してみてください。

 

【さいごに】

鬼門除けとしての竈神社、疫病退散の鬼面がある若一王子神社、『鬼』に関するキーワードでこの2つの神社をご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により何かと我慢の多い年になってしまいましたが、寒い冬に向けて感染症の災厄に負けないよう厄除けとして参拝してみてはいかがでしょうか。どちらも市街地にありますので、神社巡りをしながら街の雰囲気を楽しむこともできます。
竈神社も若一王子神社も地域の人々に愛され、大切にされている場所です。きっかけはどうあれ、そうした場所が注目されるのは大変嬉しいことですので、訪れる際には神社にお参りする作法やマナーを守ってお楽しみいただければ幸いです。

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