2021.03.12ブログ

春を迎える居谷里湿原

3/11(木)に居谷里湿原に春探しに行ってきました。
たまたま山岳博物館友の会の方も植物の状況調査のためにいらっしゃったので、ちゃっかり同行させていただきました。

【ザ・湿原という感じの風景です。東側遊歩道から。】

居谷里湿原(いやりしつげん)は幅130m、長さ500mの範囲にわたって広がっている湿原です。
昭和46年に長野県天然記念物に指定されましたが、しだいに湿地部分はハンノキ林によって占められ、部分的に湿原の乾燥化や陸地化が進むなどの環境の変化により、湿原特有の貴重な動植物の生息地が限られるようになってきました。
そうした状況から平成4年より保存のための準備調査を行い、平成8年から保護対策事業を継続しています。
(大町市文化財センター発行:自然観察ガイドNO.5居谷里湿原より)

遊歩道からはハンノキなど様々な植物が楽しめます。

【ハンノキ】

遊歩道入り口から西の遊歩道を進んでいくとこの地を鎮める神様を祀る居谷里神社があります。
お邪魔しますというご挨拶も兼ねてお参りしました。

【居谷里神社】

居谷里神社でのお参りを終え、西側の遊歩道を北へ歩いていくと水の流れのあるスポットがぽつぽつと出てきます。
ザゼンソウはちょっとずつ顔を出している様子が伺えます。

【ザゼンソウ】

リュウキンカはやっと葉が出たところでしょうか。黄色くかわいい花が見られるのはもう少し先のようです。

【リュウキンカ】

ミズバショウの芽もちょんちょんと目立ってきました。

【ミズバショウ】

遊歩道は一部陽が当たらないところに雪が残っていますので、3月中に散策を予定している場合は長靴やスノーシューズ、登山靴など滑りにくい装備でお出かけください。
まれに湿原内に人の足跡が残っていることがありますが、特別な許可を受けた方が動植物の調査のため湿原内に入ることがあります。
一般の方が遊歩道の柵を超えて湿原へ立ち入ることは自然保護の観点から禁止されていますので、植物の写真撮影をされる場合は望遠レンズを持参することをお勧めします。

道中、湿原内にハナノキを発見しました。
ハナノキ(ハナカエデ)はこの居谷里が北限とされていて、春先に遠目から見ても赤く見えるほど花が咲くことからハナノキと呼ばれています。
大町市内には「はなのき保育園」がありますが、このハナノキからとっているのでしょうか。

【ハナノキ】

【ハナノキをよく見るとほんのり赤い冬芽が。】

東側の遊歩道までたどり着くと、西側に比べて陽が良く当たるせいかザゼンソウも良く開き、フキノトウは花が咲き始めていました。
ポイントによっては遊歩道のすぐ脇にザゼンソウが見られるので、この時期は東側の遊歩道を散策した方が発見がたくさんあるかもしれません。

【ザゼンソウ 中心部のぶつぶつは実は花なのだそう!】

【フキノトウも花が咲き始めています。】

【こちらもフキノトウです。】

陽が当たってぽかぽか気持ちよく遊歩道を歩いているとなにやら小さい毛むくじゃらが…。
近づいてみるとモグラでした。すでにお亡くなりになっている様子でした…。
何かの間違いで陽に当たって死んでしまったのかと思いましたが、実はモグラが陽にあたると死ぬというのは事実では無いそう。
モグラは意外に大食漢で、簡単に言いますと空腹が一定時間続くとすぐに死んでしまうのだとか。
モグラは常に土の中にいるため聴覚や嗅覚が発達している反面目がほとんど見えず、太陽のもとに出てしまうとエサを見つけることが非常に困難になり、エサを探すうちにお腹がすいて死んでしまうことがあるのです。

【モグラ】

これも自然の摂理なのでモグラを後に遊歩道入り口へ向かって進んでいきます。
途中、湿原の中になにやら人工的な形の穴が見えてきます。
これは戦時中、国内の燃料が不足していた時期に燃料の生産量を増やすために泥炭を掘削していた後で、現在でも10か所以上見ることができるそうです。
ぱっと見た感じ『これだ!』とわかるものは2~3か所だと思ったのですが、ぜひ探してみてくださいね。

【泥炭採掘跡】

最後に居谷里一番水をさわってクールダウンしました。
春とは言えまだ3月、冷たい水が心地よい音を立てながら流れておりました。
これは居谷里の湧き水で自己責任ですが飲むこともできます。(お腹の弱い方は湧き水でも生水を飲むとお腹を壊すと聞いたことがありますので積極的に推奨はいたしません。私はお腹強いのでむしろ元気100倍になりました!)
居谷里を水源とする水は大町の本通りから東側の地区や社地区などのご家庭で水道水として出てきます。

【居谷里一番水】

最後に、遊歩道案内看板近くから鹿島槍ヶ岳が見えましたので記念撮影です。

【居谷里湿原から見える鹿島槍ヶ岳】

信濃大町にも春が訪れつつありますが、居谷里湿原は遊歩道でも一部雪が残っているところがあります。また、遊歩道をふさぐ倒木なども見られることがありますので、お出かけの際は歩きやすく滑りにくい靴や長袖長ズボンをしっかり用意してください。(今回発見した倒木については関係機関へ対応依頼済みです。)
さらに、まだ足跡は見られませんでしたが熊が生息する地域でもありますので、熊鈴やラジオを持参したり出来るだけ大人数で散策するなど対策を怠らないようにしましょう。

 

【居谷里湿原へのアクセスはこちらから】

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